知るともっと楽しめる神楽!vol.2「神随神楽、火鎮」【豊前市/吉富町/上毛町/中津市/宇佐市】
公開日:2021年12月30日 (更新日:2024年04月13日)
ライター:Yosaroh
NOASエリアが誇る豊前神楽。コロナの影響で毎年恒例だった秋の奉納を見ることができず、残念な思いをした方も多くいらっしゃるのではないのでしょうか。しかし、最近徐々にではありますが、イベントなどで再び神楽を観る機会も出てきました。
数年ぶりとなる今回も馴染みが薄い人も神楽好きの人にも知るともっと楽しめる話をご紹介します。
今回ご紹介するのは演目、「湯立」の中の後半の演目、神随(かんずい)神楽、火鎮(ひしずめ)に関するお話です。
※こちらの記事は豊前市の神楽の研究を元に作成しています。
Vol.1はこちらをクリック♪→知るともっと楽しめる神楽!「駈仙(みさき)」
湯立とは?
湯立はまず、屋外で四方に縄で結界を張り、4人の舞手により場を清める四手神楽、そして陰陽道的要素も取り入れられた湯駈仙神楽で陰陽交代、そして五行循環を祈ります。
鬼が竹に上ってアクロバティックな芸を見せるこの湯駈仙のイメージが強い人もいるのではないのでしょうか。湯立は前述した「四手(よつで)神楽」、「湯駈仙神楽」、そして場に据えられている三つ足の五徳を用いて火の霊を鎮める「神随(かんずい)神楽」、最後に火の上を素足で渡ることでも知られている「火鎮(ひしずめ)」の4つの神楽で構成されています。
本記事ではこの後半部分の火鎮のパート、神随神楽と火鎮についてご紹介します。
厳かな雰囲気が人気の神随神楽と火鎮
神聖な雰囲気を肌で感じさせてくれることでも最近人気の演目になってきているこの両演目。しかし、一体何をしているのか気になる人もいるのではないだろうか。
まずは3人で煮えたぎった湯が入った窯と五徳を囲んで行う「神随神楽」。
薪(木)から火を、火から土(地面)、土から金(湯釜)、金から水(湯釜の中の水)を生成するという五行説での木火土金水(もっかどごんすい)ですね。
そしてこの神事の鍵となるのがこの「3人」と3本の五徳の足の数。五徳の足の間はちょうど3方向ありますよね?この3方向から3人が同時に手順をふんだ上で火と水を清める作業をしているのです。清めが終了すると、中央の火に向かって「鎮」の文字を書いて火の神を鎮めます。
その後、全国の神々に神聖な湯を献上するために日本全国の神社名を読み上げたのち、湯立を行う神社の名を読み上げてこの湯をまた献上します。
そしてこの神聖な湯で人形に汚れや罪を託し、湯の中でこの人形を掻き回すことで陰陽交代、交合、五行循環を祈願しています。
ただ火を渡っているわけではない
なんだか難しいような話になってきましたが、要はこの神随神楽と火鎮のパートは謂儀(いいぎ。祝詞のようなものだと考えると分かりやすい。)と細かな陰陽道の手順に沿って祈りを捧げているのです。
火納のパートは火を渡るアクションにフォーカスされがちですが、この神事こそ奥が深いと言っても言い過ぎではないのかもしれません。
湯を支えている五徳ですが、この五徳は足の方角が決まっていて、西南(申)、北(子)、そして南東(辰)に設置されているんです。
この方角にも意味が存在し、申の方角により水が作られ、子の方角によりその水が豊かになり、辰の方角にて自然に衰える、という「三合の理」の水の相を表しているんだとか。
もっとも重要なこと
五徳の足の位置で水を表し、中央の火の上を火の相を表す方角から渡ることで「水と火の融合」を祈願していく。
そういうわけで、五徳の足を設置する方角と火を渡っていく方角と順番は非常に重要なことなんだそうです。
最後に火を足で払って西北西(戌)から東北東(寅)に駆け抜けてこの神事は終了します。寅の方角(丑寅=鬼門)は災難が逃げていく方角とも言われていることからも納得ですね。
シンプルに火を渡っているように見えるこの火鎮。実はまだまだ深い意味を秘めているこの神楽ですが、今回はここまで。是非、鑑賞する際は今回ご紹介した流れも意識して見てみてくださいね。きっともっと神聖な神楽の世界に触れられるはず。
【取材協力: 黒土神楽講 有馬徳行氏】
内容は2024年04月13日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
Yosaroh
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