「地元にこんな物があるんだなぁ」
「地元にこんな人がいるんだなぁ」
そんなことに気付くきっかけを、ジモッシュ!webから発信していきます。
(ライター:バンビ)
上毛町・ひとえファーム
取材のきっかけは1通のメール。
「ちょっと珍しい南米原産の野菜、ヤーコンを作っています」
聴いたことのない名前だ。野菜は世界で800以上の種類があると言われている。
まだまだ知らない名前のものがあって当たり前だが、その内の1つに会えるかもしれない。
名前の響きから、勝手に「コーン」の様な形を想像しつつ、待ち合わせ場所に向かった。
手作りの3年目の畑
迎えてくれた野依肥佐生さん(55)、奈美さん(45)ご夫妻は、北九州のご出身。
「母が元々吉富町の出身だったんです。私達夫婦は、最初は北九州で自営業をしつつ、趣味で区画制の畑を契約し、野菜を作っていました」
転機は3年前のことだった。
「もっと広い畑をやってみたくて、妻と相談し、母の故郷であるこの地に引っ越してきました。上毛町の叔母の土地、約200坪あるのですが、そこを借り、雑草だらけの土地を本当に1から鍬で耕し、2年でやっとここまで整えました」
今では年間30種類近い野菜を作っているという。こだわりは無農薬野菜であること。
「農薬は一切使っていません。そもそも使った事が無いので、使い方もわかりません(笑)」
口に入れるもの、身体に入れるものに薬は使いたくない。それが2人の考えだ。
ヤーコンとの出会い
「これがヤーコンです」
そう言って見せてくれたのは、芋・・・・?
勝手にトウモロコシの様な形状を想像していただけに、面くらってしまった。
ヤーコンは主に南米のアンデス地方、900m以上の高地で栽培されている作物。
10年程前から日本にも入ってくるようになった。
しかしまだまだ市場では「新参者」の野菜。スーパーなどで目にすることはまずない。
なんでそんな芋を、ここ、上毛町で育てようと思ったのだろうか。
「実は、初めてヤーコンに会ったのは、豊前の山の中でした」
10年前のある春の日、豊前の山へ山菜とりに出かけた野依夫妻。
その山の中で、山菜をとっている地元の女性の方と出会った。
話しをする中で仲良くなり、帰り間際にもらった珍しい根菜。
それが初めて見るヤーコンだった。
「試しに1株だけ、畑に植えてみたんです。そうするとうまいこと根付いて、増えて増えて、ここまで収穫できるようになりました」
成長~出荷まで
ヤーコンの収穫は冬季が主。
キク科の植物で、大きなひまわりに似たような葉っぱをつけるヤーコンは、成長すると背丈が2m程にもなる。葉は乾燥させ、お茶葉としても使うことができる。
地中にある芋の部分を食するのだが、じゃがいもなどの他のイモ類と比べてもカロリーが低く、フラクトオリゴ糖、食物繊維、ポリフェノールを多く含んでいる。
「収穫してから、すぐには出荷できないんです。少し乾燥させて、甘さを増してから出荷するんです」
生でも食べることのできるヤーコンは、シャキッとした梨のような食感が特徴だ。
まるでサツマイモの様な外見から梨のような食感とは・・・・。
「今は主に週末限定で道の駅しんよしとみに出荷しています」
残念ながら今年のヤーコンの出荷は既に旬の終わりごろになっている。
「来年用の株も、もう収穫して確保済です」
ちなみにオススメの食べ方は、かき揚げやチーズおやき。蒸しパンなどのお菓子類にも使えるそうだ。
これからのひとえファーム
野依さんが作る畑は少量多品目。
「私達はどちらかと言うと、大量に1種の野菜を作って売るより、珍しい品種の野菜を手間をかけて無農薬で育てることを選択しています」
畑には「ジャンボニンニク」(6月前後出荷)や「韓国唐辛子」(7月上旬~秋頃迄出荷)、「赤ソラ豆」(4月頃出荷)、「グリンピース」(4月頃出荷)などが育っていた。
「そうやって他のところと差別化をはかることで独自性を出し、価格も挑戦しているんです」
印象的だったのは、写真の赤ソラ豆たち。手製のネットで覆われ、虫の寄付きを防いでいた。
「消費者は無農薬が良いと分かってはいても、みてくれの悪い、虫にかじられた葉っぱの野菜は、どうしても買いません。となると、農薬を使わずに、自分たちの手で守るしかありません。葉っぱを食べる虫だけを殺す農薬なんてないんです」
野依さんはこの無農薬のスタンスを変えるつもりは一切無いと言う。
野依さんの夢
最後に野依さんの夢を聴いてみた。
「この畑でとれた野菜を使って、どこかの飲食店さんとメニューで
コラボができないかなと夢見ています。量が提供できないので、期間限定とかでもいい、どこかで、畑からその野菜が1つの料理になって、消費者の方の口に入るまでのルートを作り、それを見届けたいです」
作った野菜を粉末(パウダー)にするなどの試みも行っているそうだ。
「ひとえファーム」という名前は、「一期一会の出会いを大事にしたい」との思いから名付けたとの事。
帰りがけに、畑で育てたレモンを頂戴した。
車内に広がる爽やかな香りを嗅ぐと、ご夫婦が仲良く世話をしている光景が目に浮かび、思わず笑顔になった。
内容は2024年04月19日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
ジモッシュ編集部
地元が嫌いとか好きとかじゃなく地元にしか興味がありません! 噂を聞きつければ現地に足を運び、文字通り「地元をダッシュ」して情報発信中。 思い立ったら即行動!普段から目を皿にして特ダネをさがしています。
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