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中津市出身・友松夕香教授、母校での出版記念講演を実施【東中津中学校講演レポ&新刊紹介】

公開日:2025年07月16日

ライター:ジモッシュ編集部

中津から世界へ――「旅」と「研究」でつなぐ、地域と地球の未来

2025年7月14日、大分県中津市立東中津中学校にて、法政大学教授・経済人類学者の友松夕香氏による特別講演が開催されました。これは、同氏が執筆した岩波新書の最新刊『グローバル格差を生きる人びと――「国際協力」のディストピア』(岩波書店、2025年6月刊)の出版を記念して行われたものです。

旅する学問が教えてくれる「生きる力」

母校 東中津中学校で講演会を行いました

講演タイトルは「旅のススメ 中津からアメリカ、西アフリカへ」。中学生たちに向けて、友松氏は自身のこれまでの歩み――中津市での幼少期、アメリカ留学、そして西アフリカでの長期フィールドワークを交えながら、「旅」を通して世界と自分の可能性を広げる意義について語りました。

また、経済的困難のなかで生き抜く西アフリカ農村部の人びとの暮らしを紹介し、「わずらわしくても支え合う」という共同体の在り方に触れながら、現代日本にも通じる「共存」の可能性を中学生にも伝わる言葉でわかりやすく解説しました。

地元出身者が語る「研究」という人生の選択肢

講演では、「研究は、好きなことをとことん突き詰めること」と語った友松教授。料理でも農業でも、「興味」から始まる営みこそが学びの源であり、研究の出発点であると力強く語りました。

中津から世界へ羽ばたいた研究者のリアルな体験談は、生徒たちに「学びの意義」や「視野を広げる力」を伝える貴重な機会となりました。

東中津中学校の生徒さんは、非常に熱心に聞き入り、講演後多くの質問が飛び交いました。貴重な機会をいただいた友松教授は母校の先生や生徒にとても感謝をしておりました。

【新刊紹介】

『グローバル格差を生きる人びと――「国際協力」のディストピア』(岩波書店)

2025年6月に刊行された友松氏の新著では、西アフリカのフィールドで20年以上にわたり蓄積された知見と現地の声をもとに、現代の「国際協力」が抱える矛盾と限界を問い直します。

なぜアフリカの農村では援助がうまくいかないのか?
なぜSNS時代のアフリカで陰謀論や詐欺が広がるのか?
なぜ人びとは「支援されること」に疑問を抱き始めているのか?

こうした問いを通じて、読者自身が「世界の課題」と「日本社会のこれから」を自分ごととして考えるきっかけを与えてくれる一冊となっています。

友松夕香教授にインタビュー!

ジモッシュ!編集部

中津で過ごした子ども時代が、今のご研究にどのように影響していますか?

友松夕香教授

西アフリカで農村経済の研究をしていますが、その原点には中津での子ども時代があります。祖父母が農家で、祖母の話を通して農業の世界に自然と触れて育ちました。大学では農村社会や文化人類学を学び、特に農村部で働く女性たちの暮らしに関心を持つようになりました。研究地を選ぶ際も都市ではなく農村を選びましたが、それは子どもの頃の体験と深く結びついていたからだと思います。西アフリカでのフィールドワークでは、中津での記憶と重なるような場面に何度も出会い、その原体験が研究の根底にあると感じています。

ジモッシュ!編集部

西アフリカでの調査で、最も衝撃を受けた出来事は何でしたか?

友松夕香教授

西アフリカでは一夫多妻の家庭に3年以上ホームステイし、約30人の大家族の暮らしを経験しました。最初は混沌として見えましたが、家事や食事の分担など細かなルールによって秩序が保たれており、皆が役割を果たしていました。また、家族だけでなく親戚や知人とも助け合う文化が根づいていて、困っている人にはたとえ不仲でも支援するのが当たり前とされています。干渉や自由のなさもありますが、孤立しない社会に大きな違いを感じました。

ジモッシュ!編集部

新刊の中で、特に読者に注目してほしい章やエピソードはどこですか?

友松夕香教授

とくに注目してほしいのは第2章と第6章です。第2章では、ガーナの若者たちが国際ロマンス詐欺に関与する背景を通じて、貧困の原因が能力の欠如ではなく、産業基盤の弱さにあることを指摘しています。第6章では、米農家が高騰するコストや安価な輸入米に苦しむ実情を描き、構造的な不平等の問題に焦点を当てています。いずれも「貧困は自己責任ではない」という視点から、グローバルな格差の現実に目を向けてほしいと考えています。

ジモッシュ!編集部

地域の中高生に伝えたい「勉強の楽しさ」とは?また、国際協力に関わる人材に、今どのような資質が求められていると思いますか?

友松夕香教授

「好き」という気持ちは学びの大きな原動力です。ゲームや料理など、自分が好きなことなら自然と熱中できますよね。学校の勉強が楽しく思えないこともあると思いますが、まずは自分が得意な科目や関心のある分野を伸ばすことが自信につながります。他の科目は完璧を目指さず効率よく取り組む工夫も大切です。また、国際協力においては「現地に深く関わる姿勢」が重要です。現地語を学び、地域の人々と生活をともにし、価値観や日常を理解することではじめて見える課題があります。「支援する・される」ではなく、ともに学び合う対等な関係性を築く力が、今後ますます求められると感じます。

今回のインタビューでは、友松夕香教授の温かな語り口を通じて、研究の原点や国際協力への思いに触れることができました!

中津での原体験が、西アフリカの現場と深くつながっていることに驚き、また、地域に根ざした視点の大切さを再認識しました。読者の皆さんにも、学びや将来について考えるきっかけとなれば幸いです。

 

■ 書籍情報

■ 書籍情報

  • タイトル:『グローバル格差を生きる人びと―「国際協力」のディストピア』

  • 著者:友松夕香

  • 出版社:岩波新書(岩波書店)

  • 発売日:2025年6月

  • 価格:本体880円+税

  • 全国書店・オンライン書店にて販売中

※この記事は「ジモッシュ!」編集部が、中津市にゆかりある人物を応援する目的で作成しました。写真等の無断転載はご遠慮ください。
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内容は2025年07月16日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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