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町を読むvol.2~上毛町・道の駅しんよしとみ~

公開日:2019年07月30日 (更新日:2024年04月18日)

ライター:ジモッシュ編集部

「地元にこんな物があるんだなぁ」
「地元にこんな人がいるんだなぁ」

そんなことに気付くきっかけを、ジモッシュ!webから発信していきます。

(ライター:バンビ)

道の駅しんよしとみ

「東九州自動車道が開通したから、すっかり人が減っちゃった」
そう言いながら材料を手早く合わせていく秋吉さん。
ふわふわのメレンゲが、窓から入る春の光を浴びて白く輝く。

ここは「道の駅しんよしとみ」の裏手にある菓子工房。
秋吉和実さん(67)はここで様々な酒類の菓子を作り、道の駅で販売している。
「お菓子によっては卵黄だけ使って、卵白が余っちゃうの。もったいないなぁ、これで何かできないかなぁと思ってね」

きっかけは市報に載っていた、道の駅の建設を機に、味噌そしてお菓子を作る人の募集に応募したことだった。最初は15人からスタートしたプロジェクトだったが、20年で残ったのは秋吉さんだけ。
「まぁね、気楽にやってますよ(笑)」

秋吉さんはあっけたかんとして笑う。しかしその仕事量は膨大だ。幼稚園のおやつ、道の駅の販売用の菓子作り、全て秋吉さんでスケジュールを立て、まかなっている。

歩み

秋吉さんはお隣の豊前市出身。
元々は地元の工場に勤めていたが、リストラをきっかけに46歳で退職した。
ちょうどその時にできたのが「道の駅しんよしとみ」だった。

「もとはお花作りとかが好きだったんだけど、そういう仕事も楽しいかなって思って」
いざ着手すると、秋吉さんの食に対する姿勢は真摯な物だった。

「材料は決めたメーカーの物しか使いません。レモンやたまご、フルーツは全て地元産の物を使っています」
現在は夫の営むイチジクの栽培も手伝っているという。
「コンポートやワイン煮なんかも作ってるよ」

味見させてくれたイチジク。これも絶品だ。

商品ラインナップ

売り場に出ると、そこには秋吉さんの作ったお菓子がずらっと並ぶ。
クッキー(レーズン、チョコ、ナッツ等)、マカロン、ビスコッティ、プリン(ごま、かぼちゃ等)、ケーキ(シフォン、エンゼル)、蒸しパン(抹茶、ミルク、キャラメル、ココア)、その数は年間20~25種に及ぶ。

「あ、ビスコッティ、まだある?」
リピーターのお客さんが早速やってきた。
「あるよ、まだ。あ、そういえばあれさぁ・・・」

秋吉さんはお客さんとしばし話してから売り場に商品を並べ始めた。

「ここにいると、お客さんやスタッフさんと話ができる。それも楽しみの一つなの」
孫が6人もいるという秋吉さん。お菓子を送ってあげることもあるそうだ。

「でもね、ネット通販とか、今はあるじゃない?でも私はネット販売より、誰が作ったかわかるお菓子の方が断然いいと思うの」

心と心で、顔と顔で、お互いをわかったうえでの買い物。
田舎ならではだが、それがいいのだと言う。

ふわふわ、ふんわり

焼きたてのエンゼルケーキも出てきた。

散らされたアーモンドが香ばしく薫る。

「私もね、ぼちぼちやってるって言ったけど、やっぱり後継者は必要かなって思ってます」

オリジナルのレシピも、毎日のルーティン作業も、道の駅の出品作業も、一朝一夕ではできない。やはり若い後継者を探したいとの思いは日々募る。
「あと4~5年は頑張れても、もう70歳になったら、体力も限界がくるかもしれないなって思ってますよ。それまでには何とかしたいなぁとね」

エンゼルケーキをクーラー(網)に乗せる。
自然に冷めるまでの間も、様々な業者さんがやってくる。

「あら、あんた元気にしとったん?」

ここでも「顔が見える」コミュニケーションが行われていた。

お菓子の甘さ

秋吉さんが入れてくれたコーヒーを飲みながら、最後にお菓子に対する思いを聴いてみた。

「安心とか、安全とか、紙に書いて、張り出してもさ、結局それが本当に安全かどうかを知っているのは作った本人だからね。私はこのお菓子に何が入ってるか、逆に何が入ってないかは全部わかってる。だから、安心して人にすすめられますよ」

道の駅の売り場スペースでも聞いた、「作っている人の顔が見える買い物」。
野菜も、お菓子も、道の駅にある物は、全部そんな商品ばかり。

「田舎もね、悪くないよ」

秋吉さんが最後にそういって、私の手にポンとビスコッティを乗せてくれた。

内容は2024年04月18日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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ジモッシュ編集部

地元が嫌いとか好きとかじゃなく地元にしか興味がありません! 噂を聞きつければ現地に足を運び、文字通り「地元をダッシュ」して情報発信中。 思い立ったら即行動!普段から目を皿にして特ダネをさがしています。

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