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☆☆☆チョップ・イチロットンのシュミランガイド☆☆☆

公開日:2018年11月12日 (更新日:2024年04月19日)

「趣味」とは、人間が自由時間に好んで習慣的に繰り返しおこなう行為、事柄やその対象のこと。
又、趣味は道楽ともいわれるが、そこからは職業以上に、さらに「人生」というものが深く浮き彫りとされる。
私は趣味を通して、「人間」を知りたいのだ。

連載第2回【まごころを、君に】

プロローグ

彼女は私(筆者)の目をまっすぐに見据えながら話した。
その目力があまりにも強すぎて、私はたまらず目をそらすと、我慢していたまばたきをしながら、そっとスマホのメモにその言葉の数々を記していった。
彼女の名前は、佐藤愛。
愛と書いて「めぐみ」だ。
1991年生まれの27歳。
その一見小柄で華奢な感じとは裏腹に、彼女の趣味は「格闘技」である。

目覚め

めぐみの父親は空手家であった。
屈強な、男の中の男だった。
そして、同時に母親はとても正義感の強い人で、そんな両親のすすめもあり、彼女は幼い頃に少林寺拳法を習い始めた。
母親曰く、彼女は決していじめを受けるようなタイプではない。
では、何故に武道かといえば、逆に「いじめられている人を助けられる」ような、そんな人間になってもらいたいとの思いから、両親はひとり娘のめぐみにそれをすすめた。
すると、天性の活発さから、彼女はすぐに少林寺拳法に“どハマり”した。
低学年の頃、型の演武では賞をもらい、だが、次の年に負けた時には泣いて悔しがった。
負けず嫌いは、小六ですでに初段を取り、黒帯を巻いていた。

めぐみが6歳の時、大好きな父が病気になった。
肝臓癌だった。
どんな病名かはわからなくとも、ただの風邪ではないことくらいは理解していた。
やさしく、強い父であった。
彼女はいつもそんな父の大きな背中の後ろをついて歩いた。
めぐみは父に叱られたことが一度もなかった。
いくら思い返しても、ただの一度もない。
むしろ、父は「嫌なことはやりたくない」と主張する彼女を誉めてさえくれた。
だが、父は決して甘やかせているだけでもなかった。
可愛い娘にあえてハサミを持たせ、その危険性を教えるような、そんな父だった。

別れ

そして、父が亡くなった。
それは、めぐみが少林寺拳法を習い始めて間もなくのことだった。
「力無き正義は無力なり、正義無き力は暴力なり」という少林寺拳法の理念と共に、父は彼女に「守る力」を教えて、そして旅立っていった。
四十九日の納骨。幼いめぐみはそれを拒んだ。
「お父さんを冷たいところに入れたくない」と彼女は言った。
すると母は、御守りの中に父の遺骨の一部を入れ、そっとめぐみに渡した。
彼女は今もずっと、それを肌身離さず持っている。

戦い

高校は看護科に進んだ。
幼い頃に父の死を経験したことによる、彼女自身の選択であった。
ひとりでも多くの病に苦しむ人を助けたいという、本気の思いであった。
同時に、めぐみはボクシングジムにも通い始めた。
それは、主に看護実習に向けての体力作りが目的だったが、彼女はそれにも“どハマり”した。
エキジビションではあったが大会にも出場し、結局高校の3年間ボクシングを続けた。
めぐみは何より格闘技が好きだった。

信念

こんな話がある。
学校への通学途中の電車の中で、他校の生徒による「いじめ」を目撃した彼女は、そのままその学校へとひとりで乗り込み、そのいじめた生徒を呼び出して間違いを説いた。
それはさながら、昭和の番長漫画のようであった。
そして後に、その学校の先生が彼女の元へと訪れ、謝罪と賛辞の言葉を述べたという。
そう、めぐみの中に、父は生きているのだ。

母・活動

現在、彼女は地元の中津市で『あまじ』という小料理屋を営んでいる。
本人は毎週末だけ店に出ていて、平日は母親である裕見子さんが店を切り盛りしている。
めぐみのすべてを理解している、強くて、やさしい母が。
そして、めぐみは普段、福岡は博多を拠点とし、日本中を飛び回っている。
何故なら、彼女にはやらなければならないことがあるからだ。
いや、「好きなこと・やりたいこと」があるからだ。
旅、車、音楽、猫、パワースポット、少林寺拳法、ボクシング、そして今はMMA(総合格闘技)のジムにも通い、又、その他にも富士山登頂や、現在は自転車のロードレースまで行なっている。
彼女は言った。
「私にとって、すべては一緒」だと。
めぐみに職業、趣味といったジャンル分けはない。
彼女には、「好きなこと・やりたいこと」というひとつのカテゴリーしかないのだ。
そして、それはくしくも筆者が長年思い続けてきたことと同じだった。

エピローグ・約束

「アダム」と「リリス」の間に生まれし生命の種は、決してひとところにとどまっていてはいけないのだ。
広い海を泳ぐ魚でなくてはいけない。
そして、彼女は「世界の中心でアイを叫んだけもの」の如く、趣味、又は格闘技を続けている。
そう、すべては「真の心」を教えてくれた、大好きな父と交わした約束のために。

内容は2024年04月19日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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